母親は、どちらかというと温厚でのんびり屋だったが、80歳という高齢になるにつれて、だんだん頑固になりイライラすることが多くなってきて、最近では時々口論になるので困ったなと感じることはありませんか?
高齢になると怒りやすくなったり、頑固になったり性格の変化が起こるのは認知症の始まりとも聞きますよね?実際、高齢者のイライラとその原因や性格の関係についてご説明させていただきます。
母親が高齢になりイライラが増えてきた!
高齢になるにつれてイライラが増えているな・・・そんな母親の中で何が起こっているのでしょうか?
考えられるいくつかの状態として、①認知症の症状、②認知症ではないが、脳の前頭葉の働きが衰えているために「怒り」のコントロールが悪い、③環境の変化という節目に遭遇したことによる反応(一種の喪失体験による反応)があります。
一見、あなたからは同じイライラに見えるかもしれませんが、そのイライラの根っこである原因は違っていたりするものです。
高齢者のイライラの原因は?
“では、高齢者のイライラの原因とは何なのでしょうか?”
まず、
①認知症の症状である場合です。
認知症が最も発症しやすい年齢としては「65~70歳」とされています。
「怒りっぽく」なったり、「頑固になった」、「だらしなくなった」、「人の話を聞かなくなった」などの人格の変化が見られたりしており、認知症の初期症状として現れる状態は様々に存在します。
そんな初期症状の兆候を測る指標として昨年、国際アルツハイマー病会議で発表された『軽度行動障害(MBI)』というチェックリストがあり、本人と関わる家族や親しい人がチェックすることができ、認知症の症状なのかの目安になるかと思います。
ちなみに、『軽度行動障害(MBI)』は「意欲や気力」・「気分や不安」・「衝動抑制や興奮」・「社会適合性」・「思考」の5つの領域があります。
各項目に対して「その状態が6ヵ月以上続き、以前とは異なる状態か」どうか、YESと答えたものについては「ある」・「かなりある」・「深刻」のどれに当てはまるかも回答するチェックリストです。
他にも、認知症の一歩手前の『軽度認知障害(MCI)』について調べる観察リストには、「初期認知症微候観察リスト」というものがあり、12項目のうち4項目が当てはまる場合と要注意です。
次に、
②認知症ではないが、脳の前頭葉の働きが衰えているために「怒り」のコントロールが悪い場合です。
『怒り』の感情は、脳の「大脳辺縁系」という部分で作られるのですが、その怒りを抑える働きをするのが、脳の「前頭葉」部分なのです。
この前頭葉なのですが、加齢とともに機能が低下することが分かっています。
つまり、怒りを抑える力が弱まって感情が制御できなくなってしまうことが、新たなイライラを生むわけなんですね。
最後に、
③環境の変化という節目に遭遇したことによる反応(一種の喪失体験による反応)の場合です。
「平成28年国民生活基礎調査概況(厚生労働省)」によると、多くの高齢者がストレスを抱えており、「年齢が上がるとともにストレスを抱えている人が多くなる」という特徴が明らかになっています。
高齢者は、内閣府が公表している「平成8年度高齢者の健康に関する意識調査の結果」によると、『健康上の問題』、『政治、外交等社会問題』、『子どもとの関係』、『仕事上の問題』があげられています。
特に、加齢によって生じる職場退職という環境変化が高齢者にはストレスとなり、別の調査によると、高齢者は身体的、心理的な健康の喪失によるストレスが多いことも示されています。
上記のような喪失体験は、キューブラー・ロスによると①否認・②怒り・③取り引き・④抑うつ・⑤受容という5つのプロセスがあるといわれており、何らかの環境変化がありイライラしている高齢者は、このプロセスのうち②怒りが生じている可能性があるかもしれません。
母親は高齢になり性格が変わった?
“高齢になって人は性格が変わるのか?”
① 認知症の症状である場合
脳内に変化が起きているので確かに性格が変化していると言えるかもしれないでしょう。
② 認知症ではないが、脳の前頭葉の働きが衰えているために「怒り」のコントロールが悪い場合
怒りを抑える力が弱くなっただけであり、もともと持っている性格が外にあらわれたと考えられるので、性格が変わったとは言い難いかもしれません。
③ 環境の変化という節目に遭遇したことによる反応(一種の喪失体験による反応)の場合
一時的に強い刺激がなされたことでイライラの反応を示しているので、根本的に性格が変わったという訳では無いのかもしれません。
高齢者のイライラとの付き合い方
相手のイライラのメカニズムが分かると、あなたの気持ちもすぐには苛立たなくなるのではないでしょうか?
・・・そしたら、口論も減ってお互いに過ごしやすく、付き合いやすくなるかもしれません。
「平成8年度高齢者の健康に関する意識調査の結果について 概要版(内閣府)」によると、最も多いストレス解消法は「友人に話を聞いてもらう」であり、女性に特に多く見られたそうです。
80歳という年齢を考えると、付き合いの続いている友人に限りがある場合もありますので、その時はそばにいるあなたが母親の話を気長に聞いてあげましょう。
そうすることで、必然的に相手のストレスを減らすことに繋がり、イライラされる回数が減る可能性が高いでしょう。
まとめ
高齢者も、脳をまんべんなく使うことで脳機能の低下を防ぐことができます。
「初めてのことにチャレンジしてもらう」、「いつもと違う人と話をしてもらう」、活動範囲を広げるというのも結果として母親のイライラ低下に役立つかもしれません。
しかし、新しいことにチャレンジするときは、それはそれで環境の変化になりえるので、行動するときはあなた自身も母親と周りに相談して、慎重に行動したほうが良いと思います。
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