四国八十八ヶ所霊場を歩き遍路で行く方にとっては、必要不可欠なものが、金剛杖(こんごうづえ)です。
金剛杖は、歩き遍路をするうえで精神的にも肉体的にも支えとなる無くてはならない必需品です。
その金剛杖の意味や、自分に合った長さはどれくらいか、持ちやすくする工夫などを紹介します。
お遍路の金剛杖の意味は深い
お遍路の必需品である杖は、金剛杖(こんごうづえ)またはへんろ杖と呼ばれます。
杉やヒノキといった白木で出来た長さ1メートル以上ある木製の杖です。
金剛杖は、へんろ杖として、特に遍路ころがしと呼ばれるような険しい山野を歩くときにも、雨風を凌ぎながら悪路で身体がよろけた時にも助けてくれ、野犬やマムシを追い払うためにもとても役に立ちます。
へんろ杖と呼ばれる、お遍路が遍路用品のなかで一番大切にするのがこの金剛杖なのですが、それには深い理由と意味があります。
四国遍路には、そもそも「同行二人」の考え方があり、たとえ一人で歩き遍路をしていたとしても、常に傍に弘法大師がいて見守ってくれているというものです。
その遍路中、一番身近な金剛杖が、「弘法大師」の化身としての役割を持つことから、金剛杖を持って巡拝することは、弘法大師とともに歩くことであり、そのことを「同行二人」と呼びます。
金剛杖は、杉やヒノキの白木で、上部は4ヶ所に切り込みが入っていて、「地・水・火・風・空」の梵字が書き込んであります。
サンスクリット語である梵字は、インドで使用される梵語を表記するための文字で、仏教、弘法大師や最澄が伝来させた密教とも密接な関わりがあります。
この、金剛杖の上部に五輪の塔を施し、「地・水・火・風・空」の五文字の刻みは、卒塔婆を模していてこれは五輪塔を形どったもので、卒塔婆の先端と同じです。
卒塔婆とは、細長い板に戒名などの文字を書き、亡くなった方の供養に用いるために、墓石の後ろに立てられます。
なぜ、卒塔婆に模した形の金剛杖が、お遍路の杖となったのかは、それだけ遍路するということは、死を覚悟するほどのものだったらということです。
お遍路の杖の長さは自分に合ったものを選ぼう
最近では、市販の多くは130cmの長さの金剛杖が販売されていますが、昨今の日本人の体格からすると、短く感じる方も多いのではないでしょうか。
歩き遍路にとり、金剛杖は体重や荷物などの総荷重を金剛杖にかけて支えるために頼れる杖です。
その強度と自分に適した長さや、へんろ杖が必要の無いときには、持ち運びに便利な軽さが求められます。
歩き遍路をされる場合は、全行程1,200キロをともに歩くわけですから、実用性も重視しなければなりません。
一般的に、身長くらいの長さか、身長マイナス10cmの長さが、両手ですがりやすい長さと言われます。
山野を歩くには、特に山を下るような場合は130cmだと短く感じるかもしれません。
市販の金剛杖の長さが130cmのものが多くなったことには、車遍路が多くなったことも理由のひとつです。
130cmだと車のトランクに収納できるサイズということもあります。
歩き遍路をされる方が少なくなり、駐車場から本堂や太師堂までの参拝なら問題ない長さかもしれません。
こちらでは、ひのきで作られた146cmという、通常より少し長めの長寸の金剛杖が販売されています。
身長が高い人向けの杖が良いですよ。
人気があるため、売り切れになる場合がありますので、要チェックです。
こういった実用性のあるものは実際に持ってみないと分からないかも知れません。
|
長さが調節出来るのはありがたいですよね。
しかし、第1番札所の霊山寺、もしくは逆打ちの第88番札所の大窪寺などで購入を考えられているかたは、長さは限られてきます。
杖を売っている遍路用品の販売所はありますが、通常の130cmしか販売していないことが多いです。
ですから、歩き遍路をされる場合は、事前に揃えておいたほうが良いでしょう。
お遍路の杖には名前を書いて持ちやすくしておこう
金剛杖の胴体部分には、「南無大師遍照金剛」「同行二人」の文字が入っているものが多いです。
種類によっては般若心経が書かれているものもあります。
その胴体部分に、自分の住所や氏名を記入します。
これは、他のお遍路さんの金剛杖と迷わないようにと思われていますが、実はそれだけではありません。
金剛杖はお遍路の伴侶となるものです。
上部に4つの刻みが入り、上から五段にわかれています。
その上部の梵字の五輪塔を模した部分は直に金剛杖を握らないように、錦や白布で巻き包むのが一般的です。
先にも述べたように、昔は、歩き遍路しかありませんので道中で命を落とす遍路も多かったのです。
実際に息絶えた場合、札所に納め札などで記録が残っていたり、遍路道のわきに遍路墓として供養されていたりします。
つまりは、道中息絶えても、死体を埋め、その土饅頭の上にこの杖を立てて墓のかわりにしたのです。
遍路の正装白衣や菅笠もその覚悟の表れと言うことです。
また遍路中は、杖はお大師さまに見立てて粗末に扱いません。
上部を白布や錦で巻き包むのもそのあらわれです。
そのしたを握るようになると思います。
そこにやわらかいゴム入りの布(伸縮性のある包帯など)を巻き付けておくと手にも優しく、ご宝号が消えることも防いでくれます。
へんろ杖として使わない場合は、金剛杖の中心部を持って歩くと思います。
その時は、自分の持ち運びする時の持ちやすい部分にもそのような布を巻き付けておくと般若心経が書かれてあれば、こすれて消えることも防げますよ。
宿につくと、まず自分の手足よりも先に杖を洗い清めましょう。
その心は、お大師さまの足を洗う気持ちなのです。
常に遍路はお大師さまと「同行二人」なのです。
まとめ
最近は、コンビニエンスストアなどもあり、水分補給や暖を取ることも容易にできます。
それでも、歩き遍路は本当に大変で、お遍路さんをお見かけすると本当に頭が下がる思いです。
どうぞ、寂しい道や険しい道を歩くときに常に弘法大師さまを感じながら安心感や一体感を覚え、金剛杖が心の支えとなりますように。
コメント
はじめまして
大変参考になります。
金剛杖を切断して専用の継金具で次いで使用しておりますが、
切断はいけない~等
いろいろな意見があり困惑しております。
市販されているものもあるのに何故と不思議に思います。
人に迷惑をかけないという最低限の決まりは守っているつもりですが、
人によって様々な意見があり迷っております。
どうしましょう~
久保博文さま
コメントありがとうございます。
金剛杖を自作されているのですね^^
長い杖が身体に合う場合の方が多いような気がします。
東寺のお坊さんに聞いた事があるのですが、身体に合った杖が一番と言っておられましたよ。
山道など削れてくる場合もありますでしょうし・・・継金具で次いでも安全なことが一番だと思います。
切断してはいけないというのも、よく言われますよね。
人に迷惑をかけないという決まりを守られているなら
意見に左右されず、自作の金剛杖も同行二人で守られますよ。
久保博文さま、無事結願されること願っていますね。
コメントありがとうございました。