おそらく、多くの日本女性が小さい頃にお祝いをしてもらっていたであろう、ひな祭り。
私自身も小さいながら、その時期が来ると飾られるお雛様に目を奪われ、赤やピンク、白に淡いグリーンの色鮮やかな飾りがとても可愛らしく、3月3日は自分のための特別な日だ、と思っていました。
ひな祭りをしない、というご家庭ももちろんあるでしょう。
もし自分が小さい頃お祝いをしてもらっていて、娘をもつご家庭であれば、ひな祭りのお祝いをしてあげたいな、と思っているママも多いかもしれません。
ひな祭りのごちそうには、ちらし寿司、はまぐりのお吸い物などが出されます。
日本の古くから伝わる行事や行事食には、それぞれ意味があります。
はまぐりのお吸い物は、なぜはまぐりを使う必要があるのでしょうか?きっと何か由来があるはず。
また、3月3日は桃の節句、5月5日は端午の節句、という呼び方がありますよね。この桃の節句と呼ばれるに至った経緯は何なのでしょうか。
こちらでは、少し早い春の訪れを感じさせてくれるひな祭りについてご紹介したいと思います。
はまぐりをひな祭りで食べる理由は?
ひな祭りには、はまぐりのお吸い物が一般的です。なぜはまぐりなのでしょうか?
まず、はまぐりの旬が春である、ということ。
古くから伝わる風習や行事、そこで食べられる料理には、その時に収穫できる、食べることが出来る食材であることが大切です。
現代のように旬の時期以外でも手に入るわけではありませんでした。
また、はまぐりは栄養価が高いそうです。鉄分、カルシウム、タウリン、ビタミン、亜鉛などが多く含まれており、女の子の幸せと健康を願うひな祭りにとって、栄養価の高いはまぐりが選ばれたと考えられます。
はまぐりの栄養価を損なうことなく、全ていただくことが出来る料理が、はまぐりから出る出汁までしっかり取り入れられるお吸い物だったのではないでしょうか。
昆布とはまぐりなどで簡単に作ることが出来た、という点でも現代でもずっと受け継がれている理由かもしれません。
ひな祭りにはまぐりは貞操の意味?
日本人は古くから、行事食には縁起をかつぐことが好きなもので、もちろんこのはまぐりが選ばれたのも、旬であること、栄養価が高いこと、以外に理由があります。
はまぐりは、2枚貝ですが、元々組み合わさっていた2枚の貝柄でないとぴったりと合わないそうです。
こういった特徴から、はまぐりの貝柄のように、ぴったりと対になれる良き相手と巡り合い、一生幸せに暮らせるように、との夫婦和合(ふうふわごう)の意味が込められています。
対になれる貝殻が決まっていたことから、平安時代には、現代の神経衰弱のように、対になる貝殻を探す遊び「貝合わせ」が宮廷の女性の間で流行っていました。
貝殻の裏に絵を描き、そちらが見えないようにいくつか並べて遊んでいたそうです。貝合わせにはまぐりが使われていたことも、選ばれた理由の1つかもしれません。
また、昔は女性が貞操(ていそう)を守るということがとても大切である、とされてきました。
現代のように離婚が身近なものではなく、女性は嫁入りすれば、なかなか実家に帰ることもできず、ましてや離婚などすれば、恥のようにさえ思われていました。
貞操を守ることが当たり前であった時代に、せめて娘が本当に幸せと感じられる人のところへお嫁に行けるように願った気持ちは、本当に強いものだったのかもしれません。
栄養価の高い食材だけであれば、きっと他の食材でもよかったかもしれませんが、こうした親の切なる願いを込められたのは、このはまぐりだったのではないでしょうか。
現代では、貞操と言う言葉さえ知らない若者も多いかもしれませんが、結婚する相手と、いつまでも仲良く幸せに暮らしてほしい、という願いは、どの時代になれど不変の親の願いでしょう。
桃の節句とひな祭りの関係
ひな祭りという呼び方の他に、桃の節句という呼び方がありますが、なぜ桃の節句と呼ぶのでしょう?
ひな祭りと何か違いがあるのでしょうか。
桃の節句や端午の節句もそうですが、節句は1年に5日間あります。
3月3日は上巳(じょうし)の節句です。節句は、古く中国の暦によるものです。
節句とは、元々邪気を払う日とされており、上巳の節句が桃の節句と呼ばれるようになったのは、桃の季節であることの他、桃には邪気を祓う力があると考えられていたためと考えられています。
桃は木へんに「兆」と書きます。
物事や生命の兆しを意味していたので、邪気を祓う神聖なものであり、また生命を生む女性の象徴ともされ、桃の節句という言葉が使われるようになったのでしょう。
また、邪気の祓い方として、中国では、3月3日に水辺でけがれを祓い、禊ぎを行う風習がありました。
そのけがれの祓い方が、「人形(ヒトガタ)」という紙や草、藁で作られた人形を川に流し、人間の身代わりに邪気を一緒に流してもらうという方法だったそうです。
これが平安時代の日本に伝わり、当時貴族階級の女の子の間で流行っていた「ひぃな遊び」という現代のままごとのようなものと。
この紙や藁で作られた人形が結びつき、「流し雛」に変わっていったと言われています。
江戸時代に入り、流し雛から、人形は流さずに、段を組んで豪華な飾りと共に人形も飾るようになり、現代のひな祭りへと繋がっていきました。
今では、全く同じ意味合いとしてこの言葉を使っていますが、よくよく語源を調べていくと、全く同じものではない、ということがわかりますよね。
まとめ
大人になり、桃の節句やひな祭りの由来などを知ることが出来ましたが、子供のうちは、よく理解できなくても良いでしょう。
ただ、どのような形でも、自分用のひな人形があり、女の子であることを楽しいと思い、美味しいちらし寿司とはまぐりのお吸い物をいただいて、親があなたの幸せと健康を心から願っているのよ、ということが伝われば良いでしょう。
普段の生活では、なかなか言葉にして子供に伝えてあげる時間がなかったり、機会がなかったり、少し照れ臭かったりします。
しかし、こういった風習を利用し、しっかり愛の言葉をかけてあげる、ということが何より大切なことであり、本来の意義に沿ったことなのかもしれません。
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